「いつになったら治るんだろう?」と患者さんから聞かれることがしばしばあります。これに答えることは簡単ではなく、回復の個人差(同じ病名でも病態が違ったり、年齢、性別、合併症、気持ちなど無数の因子が影響する)があり、加えてその人にとっての「治る」が何を意味するかは異なります。
理学療法士として、患者さんが「治る」ことをどう感じているのかを深く理解することは、リハビリには欠かせないことでしょう。そして、その人にとっての「治る」が何かを見極めることは、より効果的な支援・治療に繋がると考えています。
1. 患者さんにとっての「治る」を理解する
理学療法士としての仕事は、ただ痛みを取り除いたり、機能を回復させたりすることに限らない。まずは、患者さん一人ひとりの「治る」とは何かを理解し、医療的な側面を踏まえた上でその目標に向かってサポートしなければならない。
例えば、ある患者さんにとっては、痛みが完全に取れることが「治る」ことであり、また別の患者さんにとっては、痛みが完全にゼロにならなくても、自分で歩けるようになることや、日常生活が少しでも楽になることが「治る」なのかもしれません。さらには、ケガをしていなくても、心身の状態が良くなり、生活の質が向上すること自体が「治る」と捉える方もいます。
このように、治療の目的や「治る」ことの定義は、患者さんによって大きく異なります。理学療法士としては、この点を理解し、患者さんと共に目標を設定していくことが非常に重要です。それは、回復へのモチベーションを高め、治療に対する前向きな姿勢を生み出すかもしれません。
2. ”機能としてはよくなっているのに本人に実感がない”現場でよく見かけるシーン
現場でよく目にするのは、患者さんの機能を客観的に捉えると良くなっていても、本人に実感がない場面です。例えば、ある患者さんが膝の痛みで治療を受けていた場合、最初は歩くことすら辛かったのに、数週間後には歩ける距離が増えていたり、階段を上る際に痛みを感じなくなったりしているのに、その患者さん自身は「よくなってない」と感じていることがあります。
3. 小さな変化を感じ取る力
理学療法士として、私は患者さん自身が「変化」に気づけるような関わりを大事にしています。治療中や生活を振り返る中で”最近、〇〇するのはどうですか?”など問いかけることで以前との比較をしていただくと、「そういえば〇〇が楽になった」と気づかれることはよくあります。患者さんにその変化を実感してもらうことは、回復に対する自信やモチベーションが高めるかもしれません。
例えば、「歩くのはつらいと感じますか?」といった声かけを通じて、患者さんに自分の体の変化を観察してもらいます。また、私はあまり選択しませんが、「良くなってますね」と言葉で伝えることが自身に繋がり、ポジティブな気持ちが湧き上がることもあります。
4. 治療の進捗を共に実感することの重要性
回復の過程は、患者さんと理学療法士の共同作業でもあります。理学療法士は、患者さんの進捗を見守り、どのタイミングで新しい課題を提供するか、どのようにサポートを続けるかを見極める役割を担っています。患者さんが回復を実感しやすくするためには、理学療法士が「あなたは確実に進んでいる」と伝え、次の目標に向かって一緒に歩んでいるという気持ちを共有することが必要でしょう。
例えば、痛みが減少した場合、その減少した痛みが患者さんの日常生活にどのように影響を与えているのかを一緒に振り返り、評価することが大切です。単に「痛みが減った」だけでなく、「そのおかげで、日常生活が少し楽になった」と実感してもらうことが、治療に対する前向きな気持ちを引き出す助けになります。
5. 治ることはゴールではない
回復には終わりがないこともあります。「治った」と感じても、その後のケアや維持が重要です。理学療法士としては、治療が終わった後も継続的な運動やケアを推奨し、患者さんが自分の体に対して責任を持つことを促します。それが、再発を防ぎより良い生活を送るための大切なステップです。
治療を通じて得た「治る」という感覚は、単なる終わりではなく、新たなスタートのきっかけとなります。患者さんが自分の体を大切にし、無理なく日常生活を送るためには、理学療法士がどのようにサポートするかが重要です。
まとめ:患者さん一人ひとりの「治る」を大切に
「治る」という言葉には多くの意味が込められています。理学療法士として大切なのは、患者さん一人ひとりにとっての「治る」が何を意味するのかを理解し、その回復を一緒に喜び合いながらサポートしていくことだと感じています。治療の過程で気づかれにくい小さな進歩に目を向け、その変化を患者さんと共有することで、回復へのモチベーションを高め、より充実した回復を実現することができると考えています。


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