姿勢から始まるナラティヴ

臨床

「調子はどうですか?」「まぁまぁです」

 これは医療現場に限らず、様々な場面で交わされるやり取りではないだろうか

 私はお会いして最初に「今日の調子はいかがですか?」と聞くことが多い

 返事は人によって様々で、「まぁまぁ」「ぼちぼち」の人もいれば、ここ1週間での出来事を振り返って丁寧に話す人もいる

 私にとって後者は願ってもない反応であり、共同でナラティヴ-物語-を生成しながら治療の方針を修正したり、治療方法を選択することに繋がる

 一方、前者の場合は様々な考えが浮かぶ。(本当に”まぁまぁ”なのか?)(あまりよくなってないのだろうか)(答えるのが面倒くさいのかもしれない)(日頃気にならなくなっているのかも)(考えないようにしてるのか)などなど、言い出すとキリがない始末である

 ここで紹介したいのは、Aさんという人の”姿勢”からナラティヴが始まった体験である

私「こんにちは。調子はいかがですか」

Aさん「まぁまぁです」

Aさんが腰掛ける

私はAさんが座った姿勢をみて、いつもと違う違和感を感じる

(最近動きが良くなってきてたけど、なんだか今日は頭が前にあるなぁ・・・。腰もなんだかだるそうだ)

私「……腰、だるいです?」

私が尋ねるとAさんは間髪入れずに

Aさん「そうなんです先生!もうこの2日間、〇〇で忙しくて……体操もできていなかったんです」

これを皮切りにAさんの語りが始まる

Aさんはとある出来事のため、日々時間に追われていたことを語り始めた

お話を聞いている最中、Aさんは「もう、愚痴ってはいけないですよね」と言いつつも語りが続く

そして、会話をしながら徐々にリハビリが始まり、二人の注意はAさんの患部へと向けられていく

リハビリ後、Aさんは腰がすっきりしたようで、「よく見てるんですね」と優しい笑顔で一言いただいた

振り返れば、初めにAさんは「まぁまぁ」と言ったが、“まぁまぁ”では無かったのである

私にとって、姿勢から始まった今回のやり取りは印象的でした

よくあることといえばそうですが、無意識にこういったやり取りが行われていることも少なくないのではないでしょうか

こうした関わりは大切にしたいと、改めて実感した瞬間でした

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